示談交渉保険会社の示談交渉サービス

示談交渉サービスとは、加害者（被保険者）が交通事故を起こした場合、保険会社の交渉担当者が加害者に代わって被害者と示談交渉することを言います。

自賠責保険に加入しているだけの場合には、示談交渉サービスはありません。自賠責保険に加えて、任意保険（人身傷害事故の損害賠償金額の無制限の保険など）に加入している場合、通常、示談交渉サービスが付いています。

示談交渉サービスでは、保険会社が被害者と直接交渉しますが、それは主として保険会社が保険金を支払うという利害関係があるためです。

そのため、任意保険の契約上では、加害者が、保険会社を介さずに、被害者と示談を成立させることは通常認められていません。

なぜなら、加害者が高額な示談金（あくまで保険会社側から見て）を締結した場合に、保険会社はその保険金を支払いたくないでしょうし、保険金の支払いを拒否した場合に保険加入者の加害者とトラブル（加害者が合意した示談金の一部を保険会社が支払わず、加害者が負担する場合など）になるからです。

示談交渉サービスが付いていることで、加害者としては、示談交渉する手間等がかからない、保険金が下りないリスクを回避できるという点はメリットとなります。また、被害者と加害者が直接顔を合わせて交渉することはなく、冷静な話し合いによってスムーズに示談交渉が進行するという点にメリットもあります。

なお、示談交渉「サービス」という名前がついていますが、むしろ、保険会社にメリットがある条項なので、「サービス」と呼ぶことにはやや違和感があります。示談交渉サービスによって示談金が低くなった場合、その利益は、主として保険金を支払う保険会社にあるからです。

示談交渉サービスとは、前述のとおり、保険会社の交渉担当者が加害者に代わって被害者と示談交渉をすることを言います。

他方、弁護士費用特約は、被害者が交通事故で被った損害を請求する場合に、弁護士に依頼する費用を保険会社が支払ってくれるという特約です。

両者は、保険に加入しているのが、加害者か、被害者かで異なります。示談交渉サービスでは、被保険者は加害者です。弁護士費用特約では、被保険者は被害者です。

また、保険給付の内容も異なります。

示談交渉サービスを含む任意保険は、加害者が負担する損害賠償義務について保険金を支払います。何百万円から何千万円単位の保険金となります。

弁護士費用特約は、被害者が負担する弁護士費用について保険金を支払います。何十万円から数百万円単位の保険金にとどまります。

なお、示談交渉サービスは、主として、加害者の加入している保険会社の利益（保険金の金額を安くする等）を図るための制度です。

弁護士費用特約は、被害者の利益（請求できる賠償金額を高くする等）を図るための制度です。弁護士費用特約があることにより、被害者はご自身で対応することなく、保険金によって弁護士に示談交渉や民事訴訟を依頼することができます。そして、被害者は、加害者又は加害者加入の保険会社に対し、適正な賠償金額を請求していくことができ、より多くの賠償金額を受領できるというメリットがあります。

加害者側（被保険者）にとっては、次のような注意点があります。

示談交渉サービスでは、保険会社の交渉担当者が示談交渉を行うため、事故の当事者である加害者が全く表に出てきません。そのため、加害者の謝罪や反省が被害者に十分に伝わらないため、被害者の怒りが収まらない点にも問題があるといえます。

したがって、示談交渉サービスの場合でも、加害者は、被害者に対して、謝罪や反省の意を伝える努力をすることが必要です。

また、示談交渉サービスは前述のとおり、主として、利害関係（保険金の金額を安くする等）のある保険会社のための制度です。そのため、ご自身が被害者的な立場にあるケース、つまり、相手に賠償を求めるケースでは利用することはできません。

たとえば、保険会社の約款に書かれているような、次のようなケースでは示談交渉サービスが利用できません。①ご自身に全く責任のない（事故の過失割合が相手方１００％）場合、②お互いに過失がある場合の自分側の被害等については、示談交渉サービスを利用できません。

自動車保険の示談交渉サービスが利用できるのは、相手方への損害賠償義務の部分だけなのです。

ご自身が受けた被害部分の示談交渉については、保険で言うと、前述の弁護士費用特約がカバーする範囲となります。弁護士費用特約に加入していない場合には、ご自身で直接対応するか、又は、ご自身の負担で弁護士費用を支払う必要があります。

弊所では、交通事故の損害賠償請求のご相談・ご依頼も承っております。交通事故については分からないことが多いかと思いますが、弁護士が丁寧・懇切に対応いたします。

被害者側にとっては次のような注意点があります。

加害者加入の保険会社は、適正な示談金を支払うべきですが、実際上、適正な示談金よりも減額して交渉することが多い傾向にあるということです。

つまり、被害者は適正な示談金を得ようと示談交渉に臨みますが、交通事故の示談交渉には不慣れで、交通事故についての法的知識等も十分でないため、保険会社優位に示談が締結されてしまう傾向があります。

示談交渉サービスによって支払われる損害賠償額は、裁判基準の約４～７割という低い水準でしか支払われないケースが多く、この点に問題があるといえます。

保険会社の提供するサービスの根幹は、適正な保険金の支払いだと思います。確かに、中には不当な請求をする者もいますが、そうではない一般の被害者に対する支払額が低いのは大きな問題です。

保険会社が誠実に対応してくれない、又は、適正な示談金を提示しているか分からない場合には、弊所の弁護士が懇切丁寧にご相談・依頼に応じますので、お気軽にお電話でご予約ください。

いくつかの自動車保険会社についてまとめたので、参考にしてください。

基本的に自動車保険会社によって、示談交渉サービスの内容に大きな違いはないようです。

（１）もらい事故について

自身に責任のない「もらい事故」の場合、つまり、加害者（又は加害者加入の保険会社）に損害賠償請求する場合の示談交渉は、弁護士法７２条（非弁行為）の問題があるため、示談交渉サービスはありません。

なお、保険会社では、もらい事故の場合、相手方との交渉はできないものの、経験豊富なスタッフが親身に相談にあたるという、もらい事故相談サービスがあるようです。しかし、もらい事故相談サービスが、相談機関の紹介等を超えて、法律事務の取り扱いとなっているのであれば、弁護士法７２条（非弁行為）の問題があります。

もらい事故の場合には、弁護士にご相談・依頼されることをお勧めします。弁護士であれば、法律上・事実上の適切なアドバイスを行うことができるうえ、相手方との示談交渉、民事裁判まで対応することができます。

（２）ネット上での進捗状況の確認について

示談交渉サービスの進捗状況の確認の点で少しサービスに違いがあるようです。通常は、保険会社は保険金が支払われるまで交渉を行って、事後報告として被保険者に電話で報告されることが多いようです。

保険会社によっては、事故後の進捗状況をネット上で確認できる範囲が拡充しており、被保険者が都合の良いタイミングで進捗を確認したり、担当者とやり取りができる点で利便性が高くなっているようです。

自転車向け保険で示談交渉サービスが付いた保険もあるようです。

近年自転車で通行人を怪我させてしまう事故、死亡させてしまう事故を起こして高額な損害賠償責任を負うケースが増えています。

たとえ子供が自転車事故を起こした場合であっても、相手に重大な被害を与えた場合には、子供の親に９５００万円もの損害賠償命令が出されたという裁判例があります。

これを踏まえて、近年では、自転車事故に備えた保険も増えており、示談交渉サービスが付いている保険もあります。自転車向け保険が拡大していくと、利害関係のある保険会社が、直接に被害者と示談交渉した方が良いとの判断でしょう。たとえば、加害者の事務負担等の軽減や保険会社の利益になるからです。

保険の商品としては、例えば、ｅ保険ストアの自転車保険（セブンイレブンで申し込みをして、三井住友海上の自転車向け保険の加入できるというシステム）やエアーリンク総合保険センターの自転車の責任保険などは、示談交渉サービスが付いています。